ジャック・アタリ

飢餓の状態になく、経済的に余裕があるのなら、世界中のほとんどの人々は、健康的な食事を他者とゆっくり分かち合いたいと思っているはずだ。誰もが料理が好きであり、食事に招待したい、そして招待してもらいたいと願っているだろう。食事を共にすることで会話は弾み、しばしば重苦しい日常に安らぎのひと時が訪れる。 しかしながら、ゆっくりと食事をとる機会は世界中で減る傾向にある。 なぜ、われわれはこのように単純で、重要で、生きるために必須の楽しみを自身から奪うのか。なぜ、皆で会食する機会は減る傾向にあるのか。なぜ、仕事上の付き合いの会食だけが豪華になるのか。なぜ、(金持ちを除き)人々は糖分と脂肪分の多い加工食品だけを慌ただしく食べるようになったのか。大きなレストラン、食堂、さらには家庭の台所さえも姿を消したが、これは人間関係の崩壊を意味するのか。いつも独りで外食し、汚染された野菜や肉、そして加工食品だけから栄養を摂取する日が訪れるのか。